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キシリトール基礎講座
 


キシリトールの基礎知識

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背景・食品としての情報


機能説明

研究データ

製品としての応用
キシリトールの基礎知識
キシリトールは甘味炭水化物の一種類です。(図1)
図1:キシリトールは甘味炭水化物

図1:キシリトールは甘味炭水化物
ガムやタブレットなどの商品名としても使われているキシリトールは、もともとは糖アルコールの一種で、5個の炭素を持つ甘味炭水化物を意味しています。この甘味炭水化物であるキシリトールの仲間には、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどがあり、これらは多くの食品に用いられています。
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キシリトールは自然界に存在します。
キシリトール(C5H12O5)は、野菜や果物の中に含まれています(図2)。
図2:自然界に存在するキシリトール

図2:自然界に存在するキシリトール
例えばイチゴには、乾燥重量100グラムあたり300mgのキシリトールが含まれています。人の体の中にも存在していて、肝臓のグルクロン酸回路で一日に15g位産生されています。ただし、ガムやタブレットの甘味料として用いているキシリトールは、工業的に作られます。白樺などの木の構成成分であるキシランヘミセルロースを加水分解して得られたキシロースに水素添加してキシリトールを作ります(図3)。
図3:キシリトールのでき方

図3:キシリトールのでき方
工業的に作ったキシリトールも、自然界に存在するキシリトールも全く同じ分子式C5H12O5ですので、両者には差はありません。
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キシリトールは、ヒトに安全な食べ物です。
1997年4月17日、厚生省(現厚生労働省)はキシリトールを食品添加物として使用すること許可しました。実はそれ以前から、キシリトールは輸液(点滴剤)に含まれる炭水化物として10年以上使用されてきました。すなわちキシリトールは、体の中に直接入れる薬品としても、口から食べる食品添加物としても安全であることが証明されています。アメリカ合衆国の食品衛生安全局も、キシリトールを1日の摂取量に制限を与えない食品として扱っています。一日平均67gのキシリトールを2年間食べ続けた研究報告でも、ヒトに悪影響を与えていません。ましては、むし歯予防に使用するキシリトール量は1日10g程度ですから、量的にも全く問題はありません。
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キシリトールはむし歯の原因にならないだけでなく、むし歯の発生を防ぎます。
むし歯の原因となる歯垢や酸を作らないことから、むし歯の原因にならない甘味料は数多く存在します。糖アルコールはその代表であり、基本的に全ての糖アルコールはむし歯の原因にはなりません。しかし「むし歯の原因にならない」と「むし歯の発生を防ぐ」は、全く意味が異なります(表1)。
表1:キシリトールはむし歯を防ぐ

表1:キシリトールはむし歯を防ぐ
むし歯の発生を防ぐ(むし歯予防)効果の最終的な判断は、長期的な臨床研究で証明されなければなりません。すなわち、「何故むし歯の原因となる歯垢や酸を作らないのか?」「歯の再石灰化を促進するのか?」などを明らかにするだけでなく、その材料を使ったグループは使わなかったグループに比較して、むし歯の発生が少なかったことを証明することが必要です。
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「むし歯の発生を防ぐ」効果が証明されている甘味料は、キシリトールだけです。
多くの長期的な臨床研究から、むし歯予防効果を証明した甘味料は少なく、キシリトールと、いくつかのキシリトール研究でコントロール(対照)として用いたソルビトールだけです。さらに、ソルビトールよりもキシリトールの効果が優れていることも証明されています。表2は現在まで行われてきた、キシリトールの「むし歯の発生を防ぐ効果」を証明した長期臨床研究の一覧です。世界で最初の研究は1975年にすでに発表されており、1980年代以降は、WHO(世界保健機構)が主催した研究など、日本を含めて多くの研究結果が報告されています。むし歯予防効果は各々の研究で異なりますが、キシリトールを使用した場30〜80%むし歯の発生を防いでいます。また、フッ素入り歯みがき剤(歯磨き粉)の中にキシリトールを入れると、10〜12%むし歯の発生が少なくなっています。
No. 地域 期間
(年)
キシリトール う蝕抑制率
(%)
摂取量
(g/day)
割合
(%)
1 トゥルク 2 67 砂糖に代替 85 全部代替法
1 6.7 65 82 一部代替法(ガム)
2 WHO          
タイ 2.3〜2.7 20 65 効果有り  
ポリネシア 3 20 65 58〜62  
ハンガリー 2・3 14・20 65 37〜45  
3 モントリオール 1・2 1〜3.9 100 52  
4 ユリビエスカ 2 7〜10 65 30〜57 ローリスク
3 7〜10 65 59〜84 ハイリスク
5 コスタリカ 3 歯磨剤に含有 10 12 フッ素歯磨きに含有
5 ベリーズ 3.3 10 0〜100 73 永久歯
2 10 0〜100 65 乳歯
6 デイトン 1.8 8.5 50〜100 80 根面う蝕
7 エストニア 4 6 100 35〜60 キャンディーとガム
8 小樽 2 2〜10 100 65  

表2:キシリトールの臨床研究
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キシリトールのむし歯予防方法は、全て長期臨床研究結果から得られています。
口に入る全ての食べ物に含まれている砂糖をキシリトールに換えて、その食事を2年間続けたむし歯予防効果は、砂糖が入っている食事を食べながら、食後にキシリトールガムを噛む効果と全く同じである事が証明されて以来、食後にキシリトールガムを噛むことが推薦されてきました。ガムを噛むことだけでなく、キシリトールタブレットやアメなどで、しゃぶっても同じむし歯予防効果が期待できる事も証明されています。赤ちゃんが生まれる前、もしくは生まれてすぐに、お母さんがキシリトールガムを噛むことが、子供のむし歯を防ぐ事も証明されています。すなわち、表3に示したキシリトールの使用法は、全て長期臨床結果で証明されているものばかりです。
むし歯予防に有効な菓子
−チューインガム
−タブレット(錠菓)
表示の確認
−シュガーレス
−キシリトール50%以上含有
摂取方法
−食後・食間  1日3〜5回
−3ヵ月以上

表3:キシリトールの使用法
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なぜキシリトールはむし歯を防ぐのでしょうか?
キシリトールがむし歯を防ぐ理由は、大きく二つに分けることができます。一つはキシリトールだけでなく他の糖アルコールが持つ作用(非特異的作用)であり、もう一つはキシリトールだけが持つ作用(特異的作用)です(表4)。
特異的 非特異的
1.非発酵性 1.唾液分泌促進
2.プラークの改良 2.再石灰化
3.ミュータンス菌の抑制  

表4:キシリトールのう蝕抑制効果
非特異的としては、唾液分泌の促進と再石灰化作用です。キシリトールは砂糖と同じ甘味を持つため、口腔内に入れると味覚が刺激され唾液分泌を促進します。また、ガムに入れた場合には咀嚼により唾液分泌が促進します。ただし、唾液分泌を促進しても、唾液にはミュータンス菌(むし歯菌)の数を減少させる効果はありません。キシリトールによりプラーク中のカルシウムレベルが上がるので、再石灰化に役立ちます。さらに、キシリトールとカルシウムの複合体は歯硬組中に進入し再石灰化を促進し、歯を硬くします。
特異的なものとして、非酸産生、プラークの質・量の変化、ミュータンス菌への影響が挙げられます。ソルビトールやマルチトールなど多くの糖アルコールは、少ない量ではあるけれども口腔常在菌によって酸を作ります。キシリトールは、口腔常在菌が利用できないため、まったく酸を作りません。プラーク(歯垢)中に存在するショ糖を分解する酵素(シュクラーゼ)の活性を低下させ、プラーク中で酸が出来難くするだけでなく、アンモニア濃度を上げて酸の中和を促進する働きが、キシリトールにはあります。ミュータンス菌への影響は非常にユニークで、この作用を理解するとキシリトールを使いやすくなると思います。ので、次に詳しく述べます。
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キシリトールとミュータンス菌
キシリトールのミュータンス菌に及ぼす影響は、キシリトールがミュータンス菌内に取り込まれても代謝経路に入れず、エネルギーを消耗させるという無益回路で説明されています。さらに、キシリトールはミュータンス菌のエネルギーを消耗せせるだけでなく、糖代謝を阻害する効果も証明されています。キシリトールはミュータンス菌のホスホエノールピルビン酸依存ホスホトランスフェラーゼシステム(以下、PTS)により取り込まれるとリン酸化され、キシリトール5リン酸となります。このキシリトール5リン酸は、それ以降の糖代謝系に入ることは無いので排出されます。これが無益回路と言われているものですが、排出されずミュータンス菌内に蓄積されたキシリトール5リン酸は、糖代謝系の酵素であるホスホフルクトキナーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、ピルビン酸キナーゼの3種類を阻害します(図4)。
図4:ミュータンス菌とキシリトール

図4:ミュータンス菌とキシリトール
ただし、キシリトール自体にはこのような酵素阻害作用はなく、ミュータンス菌に取り込まれリン酸化しキシリトール5リン酸になると代謝阻害を引き起こします。この作用によりミュータンス菌は減少するだけでなく、酸産生も減少します。
一方、ミュータンス菌の中には、キシリトールにより糖代謝を阻害されないものが存在してます。このタイプのミュータンス菌(キシリトール非感受性ミュータンス連鎖球菌:以下、非感受性菌)は、キシリトールを取り込むためのPTSが先天的に欠如しており、キシリトールを取り込まず、キシリトール5リン酸を蓄積しないので、糖代謝が阻害されません。キシリトールを常用していないヒトの口腔内に存在するミュータンス菌の約1割は非感受性菌で、残りの9割は糖代謝を阻害されるミュータンス菌(キシリトール感受性ミュータンス連鎖球菌:感受性菌)です。キシリトールを常用すると、約9割存在する感受性菌は徐々に減少し、これに代わって約1割存在していた非感受性菌が増加します。約3ヶ月摂取し続けると9割が非感受性菌に、1割が感受性菌となり、割合が逆転します。この非感受性菌は突然変異株と考えられており、非感受性菌は感受性菌に比較して、酸の産生(特に乳酸)が少なくなり、プラークの原因となる不溶性菌体外多糖を作りませんので、むし歯にはなり難いミュータンス菌といえます。不溶性菌外体多糖がないことは、プラーク量が少なくなり粘着性も低いため、歯ブラシで清掃しやすく、また感染し難いミュータンス菌とも考えられています。
このように、キシリトールのミュータンス菌に及ぼす影響は、数を少なくするだけではなく、むし歯になり難いミュータンス菌を選択します。長期的な臨床研究で、劇的なミュータンス菌の減少が無いにもかかわらず、むし歯の発生を防ぐ理由の一つとして、非感受性菌の選択があると考えられています。
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キシリトールを上手に使いましょう
口腔健康手段として最も重要なことが4つあります。それは、1)歯をみがくこと(ブラッシング)、2)フッ素入り歯みがき剤を上手に使うこと(フッ化物の応用)、3)発酵性の食品が口に中に留まる時間を短くすること(正しい食生活)、そして4)これらの手段がきちんと機能しているかチェックすること(定期的歯科健診)、です。これは子供でも大人でも、基本的に同じで変わることは有りません。すなわち、手や顔を洗い体の清潔を保つことと同じように、歯の清潔を保つための基本であるブラッシング、歯を硬くしてむし歯になり難くするためのフッ化物の応用、体や精神の健康を守るための基本である正しい食生活、そしてその効果判定のための歯科医療者による定期健診は、生涯を通じて行わなければならない大事なことと言えます。それでは、キシリトールはこれらのどこに位置するのでしょうか?キシリトールを使う(食べる、摂取する)ことは、前述の健康な歯を守る方法に取って代わるものではありません。ただし、キシリトールを常用する事は、これらの手段の効果を著しく向上させます。例えば、キシリトールはプラークを剥がし易くするため、ブラッシング効果を上げますし、フッ素と一緒に使うことにより歯を硬くする効果を向上させます。キシリトール製品を利用して、正しい食生活の教育もできますし、歯科医院ではキシリトール製品を使用したう蝕予防についての説明とその効果判定が受けられます。そのため、キシリトールを使ったむし歯予防法は、追加型むし歯予防法と呼ばれています。図5に四葉のクローバーに見たてた、歯の健康を守る手段の模式図を描きました。クローバーのそれぞれの葉っぱが、歯の健康を守る重要な要素であり、茎がキシリトールです。葉っぱが大きくなるには、茎が無くてはなりません。しかし、葉っぱが無くて茎だけでは、大きくなりようがありません。つまり、葉っぱに描かれた"手段"を大きくするためにキシリトールは使われるのです。
図5:キシリトールと口腔保健行動の関係

図5:キシリトールと口腔保健行動の関係
キシリトールの効果が期待できる菓子は、ガムかタブレット(錠菓)に限られます。これ以外のお菓子や食品、例えばケーキとかジュース類にキシリトールが入っていても、むし歯予防の効果は期待できません。なぜなら、ガムやタブレット以外でキシリトールが口の中に長く留まるものが無いからです。またこれらのお菓子には、キシリトールができるだけ高濃度(50%以上)入っている事と、砂糖などの発酵性の甘味料が入っていない必要があります。ですから、『シュガーレス』表示を確かめるか、パッケージの成分表示を良く見て、糖類が0gで有ることと、糖質中におけるキシリトールの割合が50%を超えている事を確認してください。
う蝕予防効果を十分に発揮させるためには、高濃度キシリトール配合のガムかタブレットを1日3回3ヵ月以上続ける必要があります。むし歯になりやすい場合には、特に効果的と考えられます。
ミュータンス菌の感染予防には、子供の歯が生える少なくとも3ヶ月前から、母親をはじめとする子供の周囲に居る人たちへのキシリトール使用が望まれます。
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