開催報告
2010年2月28日(日)、最新のキシリトール研究に関する学術講演会(演題:ミュータンスレンサ球菌の母子伝播に対するキシリトールの予防効果〜4論文の比較と吟味〜)が星陵会館(東京千代田区)にて開催されました。
この講演会は、歯科医学領域では国際的一流誌であるJournal of Dental Research (JDR) に仲井雪絵先生のキシリトールに関する研究論文が掲載されたことを記念して企画された特別講演です。
当日はあいにく天候が悪い中にもかかわらず、日本全国から予防歯科に熱心な歯科衛生士230名と歯科医師70名の計310名が参加しました。
羽村理事長の講演に続いてご講演頂いた仲井先生の講演内容は、下記のとおりの3部構成でした。
| T部 |
JDRとランダム化比較試験について |
| U部 |
ミュータンス菌の母子伝播予防にキシリトールを用いた先行研究の比較
(フィンランド, スウェーデン, 米国) |
| V部 |
仲井先生の研究について |
T部では、JDRの歯科医学領域の学術雑誌の位置づけと、ランダム化比較試験という研究作法の意義について述べられ、U部では、このたび日本での研究がpublishされる前に他の国(フィンランド, スウェーデン, 米国)で検証されたキシリトールの母子伝播予防研究の方法論や各研究の独創性について細部に渡っての比較を述べられました。
最後に、V部としてこのたびのJDRに掲載された研究論文の経緯と内容をご紹介下さいました。
ここでその要点の一部をご紹介いたします。
まず、このたびのキシリトールによる介入を実施する前に、ある産婦人科医院で妊婦を対象とした齲蝕リスクの実態調査を実施されたそうです。
その結果、得られた知見は以下のとおりです。
1. 感染源としてハイリスクを示した者は半数以上であったにもかかわらず、歯科医院を受診中の者は1割未満であった。
2. その中て受療目的が「予防」であった者の割合 は、さらに3分の1未満であった。
3. 妊娠前まで喫煙習慣があると,MS菌数レベルがハイリスクになりやすい。
4. 妊婦に対する介入の方法として、摂取(使用)頻度の点から「タブレット」「洗口剤」よりも「チューイングガム」「歯磨剤」の方か適している。
上記の結果より、歯科医療者と妊婦に対し,妊娠期の口腔衛生管理の重要性について認識を広めるための社会的啓蒙活動や教育の必要性を強調されていました。
この実態調査に関する詳細は、以下の研究論文をご覧ください。
(
進賀知加子, 仲井雪絵, 紀 瑩ら:妊婦における齲蝕原性細菌数と喫煙および食事に関する実態調査, 小児歯科学雑誌 45巻5号 p.584-592, 2007年)
そしてキシリトールを用いたミュータンスレンサ菌の母子伝播予防のための介入研究でありますが、過去に他国で実施された研究と大きく違うオリジナリティは以下のとおりです。
1.キシリトールの摂取開始は、妊娠中から。
2.キシリトール摂取を“感染の窓”の時期よりずっと前に終了。
3.アジア人を対象者とした初めての研究。
妊娠6か月目から子どもが生後9か月になるまで(13か月間)母親にキシリトールガムを噛んでいただき、子どもの口の中(唾液中と歯垢中)にミュータンスレンサ球菌が検出する割合を分析されました。
すると、母親がキシリトールガムを噛まない対照群よりも、キシリトールを噛んだ母親から生まれた子どもたちの方が、生後9か月以降24か月時まで有意にミュータンスレンサ球菌が検出される割合が少なかったのです。
結果の要点は以下のとおりです。
1.「妊娠期」から開始し,「感染の窓」より もずっと以前に中止しても
2.北欧人とは生活習慣,歯科公衆衛生システムの異なる日本人を対象にしても
キシリトールガムは,MS菌の母子伝播を予防あるいは遅らせるのに有効である。
この研究の詳細は、以下の研究論文をご覧ください。
(
Nakai Y, Shinga-Ishihara C, Kaji M, Moriya K, Murakami-Yamanaka K, Takimura M: Xylitol Gum and Maternal Transmission of Mutans Streptococci. Journal of Dental Research 89(1):56-60, 2010)

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